第6話 〜 明言

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レオポルド

残念だったな。お2人はとっくのとうに逃げた。蹄の音も強奪に必死で聞こえなかったらしいな。途中で一人芝居に切り替わったのに、全然気付かないんだから。馬に乗れるとおっしゃる方に対してわざわざ馬を跪かせたりするもんか。

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盗賊

こ、こいつらは何だよ。お前の部下か?

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レオポルド

まさか。でも、これは君らのおかげなんだよ。金の刺繍の話をしてくれただろ。君たちの背後に、見えたんだよ、それがたくさん。それで、多分この一団は貴族の私兵か、夜警隊かなんかだろうと思って、賭けてみることにしたのさ。

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盗賊

じゃあ、もし違ったらどうするつもりだったんだ?

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レオポルド

それでもいいさ。お嬢さんたちが逃げられたなら、私の命くらいはさ。

頭目はおし黙っていた。しかし、部下の一人は短剣を取り出して叫んだ。

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手下

な、生意気な小僧め。そんな高尚なこと言ってもな、この爺さんを道連れにすると言ったらどうだ?

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レオポルド

そうしたら、残念ながらにするだけさ。だが、いまクルトを離してくれるなら、貴族の名誉に懸けて君たちの命は取らないと誓おう。

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盗賊

くっ…爺さんを離せ。

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レオポルド

では夜警の方々、お願いします。

その時、盗賊たちの視野に暗闇から現れる、見覚えのある顔。

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クルト

あっぱれな手腕でしたな、坊ちゃん。

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手下

なっ?

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レオポルド

本物のクルトはここにいるぞ。初めて会う軍勢とこんな連携、偶然できるはずないだろ?君らに綱をよこせと言って、クルトを縛ったところまでは本当だ。だが、祈りの途中、君らの気がそぞろだったから、その隙に夜警隊の老練と入れ替わってもらったのさ。暗い上にこの距離、顔を正確には認識できてはいないだろうと読んだ通り。その入れ替わりで作戦を伝えたんだ。

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手下

でも、確かに鞍の装飾はそこにあるまま…

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レオポルド

これのことか。跪いた無人の馬の鞍から金の刺繍糸を抜いて、木の枝に刺して立てかけるくらい誰にだってできるだろう?

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盗賊

お前、何者…

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レオポルド

おいおい、さっき名乗ったじゃないか。もう忘れたのか?私はレオポルド・フォン・ヴァルトブルク。5日後に、ヴァルトブルク家を継ぎ、この国を変える者だ。

数分後。盗賊たちは全員捕えられ、母娘は無事保護された。明るい灯のもとでみると、なるほど美しい親子である。2人ともかなりやつれているのが、アルブレヒトの現在を象徴しているようで、レオポルドは胸がざわつくのを感じた。

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リア

ありがとうございま…ごほっ、ごほっ

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フィリッパ

無理しないで、リア。レオポルド様、いつかお礼はいたします。でも今日のところは申し訳ありませんが失礼しますわ。早く暖を取らないとリアが…

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レオポルド

そうですね。早くお行きください。大変でしたから。神の祝福を。

女性陣が護送されていくのを見送り、夜警隊と話していると、隊が主従の行き先、オステン侯爵の手のものだと判明した。彼らに警護されながらその目的地へ向かう途中、クルトが聞いた。

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クルト

突然、家を継ぐと宣言されたのはどうしてですか、坊ちゃん。

執事の問いに、彼はしんみりとした声で答えた。

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レオポルド

私はこの国が本当に好きだった。治安が良くて、人の気立ての良いこの国が。しかしどうやらこの4年の間にも国は変わってしまったようだ。いや、もともとそうだったのかもしれないが、でも少なくとも父さんの領土にそんな所はなかった。婦女子が夜間に出歩くことを恐れなきゃならぬ国が幸せな国だろうか。私は世間を知らなすぎるようだ。父さんの葬儀まで、いや…

若者は、急に黙った。続けるはずだった、[数日だが人々と暮らしてみるよ。多分、この決意が強まることになるから。]という言葉を飲み込んで。

執事はというと、最後の言葉に少し引っ掛かりがあったものの、この事態を本当に喜んだ。自分の心配、つまり彼は家を継ぐ気がないのではないかという不安が不要だったこと、またオステン侯爵への根回しが無意味だったことを悟ると、老人はどっと疲れて寝てしまった。

執事が目が覚ますと、見覚えのない天井を仰いでいた。

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レオポルド

やあクルト、お目覚めだな。オステン侯爵に偽の投獄事件の段取りを頼んでたところ悪いね。その前に腹が決まって。

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クルト

不覚でした。して今は。

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レオポルド

水曜の朝9時のこと。冷たい遺体が見つかった。テオドール兄さんだ。死因は、不明。オステン侯爵の従兄弟も近日同様の仕方で亡くなった。事件性、薬物使用、抵抗の痕跡は皆無だと。以上だ。さあ、行こう。オステン侯爵、お心遣いに心から感謝します。

それだけ言い残してすぐに去り行く若者に困惑していると、オステン侯爵に声をかけられる。

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オステン

まだ若いですな。しかし、いい目をしている。これから妹さんたちがこちらに喪服を買いに来るとか。それから、お兄さんの葬儀を近くの教会で執り行い、墓地に埋めるんだと。友人も既に呼んだとか。後払いするから、と葬儀の費用をせびっていったよ。厳粛に、でも壮大にとか言ってかなりの額を。ここに誓約書が…血判をして、祈請まで。

なんと手の回ることか。執事は関心していた。

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クルト

そうでしたか。坊ちゃんを甘く見ていたようです。お世話をおかけしました。では。

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オステン

おっと、タダで出れるとでもお考えで?

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クルト

は、何か失念しているでしょうか、私めは。粗相でもありましたか。

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オステン

いや。しかし、2人の宿代と治療費、食事代は貰ってないからな。ははは。

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クルト

おやおや、賓客にまでお金をせびる、ケチ侯爵だと聞いていましたけれど。

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オステン

主人が主人なら、執事も執事だな。はっきりした物言いだ。

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クルト

とんだ失礼をば。しかし、私も素寒貧で…

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オステン

はは、冗談さ。あなたの先主は貧しかった。さあ、早く行きなさい。懐かしいものだな、あの戦いの頃。

覚えておいででしたか。小さく呟いて古の戦友のもとを去る執事だった。

数時間後。立派な喪服に身を包んだヴァルトブルク家の面々と、友人たちによるテオドールの葬儀が終わった。厳粛な死者への弔いと生前のすべての行いに感謝の十分伝わる式であった。集まった皆の涙が流れ終わる前に、レオポルドは一歩前に出て、力強く、低い声で言い放った。宣言した、ともいえるだろう。自らの大事を決める、決定を。

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レオポルド

皆さまがどれほど兄さんの生い立ちをご存知かはしれませんが、私は宣言します。私の領内では二度と、そうです、二度と不必要な内紛による犠牲者を出させぬと。そのためには、もう少し人々の暮らしを理解する必要があるようです。4日後、父の葬儀でお会いしましょう。本日はご参列いただき、ありがとうございました。

そう言うと、すぐに立ち去って、1人で夕闇に消えていった。大事な時に行方をくらます次期当主に皆が当惑の表情を浮かべる。クルトがすぐに捜索隊を組もうとしたが、治療を受けてかなり回復したアルバータが兄を代弁して呟いた。

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アルバータ

お兄さまには何かお考えがあるようですから、クルト、いいじゃありませんの。では、4日後にお待ちしております、ヴァルトブルク伯爵。

Tips – Eins

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妖精

ねえねえ、歩羽理さん!

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歩羽理

どうしたんだい、妖精!

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レニャ

妖精、じゃないんだよ。私にはレニャ・オーダっていう名前があるんだから!

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歩羽理

そうなんだね、レニャ。よろしく。ところで、君、何者?

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レニャ

え?知ってそうな口ぶりだったのに、知らないなの?このさいきょーモーレツカワいいレニャちゃんのこと!

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歩羽理

(ちょっと古いな、センスが。)ごめんね、まったく知らなくて。

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レニャ

私は創作物の妖精、作者さんにいろんなこだわりを聞いて回るのが仕事なの!今日はあなたのヒ・ミ・ツを教えてほしいなの!

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歩羽理

おーけー、なにからいこうか?

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レニャ

知らないんだけど。そっちからさっさと教えるなの!

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歩羽理

え?

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レニャ

え?

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歩羽理

ま、まあいいにしようか。この作品は、神聖ローマ帝国が短命に終わったある世界線でのドイツを舞台にしているんだ。基本的に、ドイツに関連しない国際的なイベントは史実通り発生しているよ。ただ、あくまで創作として作品を楽しむために、国名は登場させないことにしているんだ。地名も同様で、現実に存在するものと似通ってはいても、同じにはしていないんだ。唯一、言語に触れるときだけ、「英語」「独語」などの表記をする場合があるよ。この原則はこれ以降も有効にしていくつもりなんだ。

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レニャ

没入感とリアルさの平衡を取っているんだね。ふむふむ。キャラクターにも没入感を高めるための仕掛けがあったりしちゃう感じ?

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歩羽理

お互いがお互いを呼ぶ呼び方はキャラの関係性によって変わっているんだよ。じっくり読んでくれてる方は分かってたかも。例えば、レオポルドの妹たちが、レオポルドに呼びかけるときの呼び方は、イレーネは「お兄様(にいさま)」、レギーナは「お兄様(あにさま)」、アルバータ「お(にい)さま」、グラティア「(にい)さま」。前半2つは見た目上の変化がないから分かり辛いけど、一応ね。これも、今後キャラが増えていくとより明快になると思うよ。なんせ、まだ執筆された部分の1/5しか公開できてないし。

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レニャ

え?既に2.5万文字程度の文量があるけど、まだ1/5なんですか。

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歩羽理

そうだね。この作品は、ケルパンカの母体Discordサーバー「SyoBAR」にて一旦公開したものを加筆修正して投稿しているんだ。現状公開された部分が11.2万文字に対して、公開された部分の原稿が2.1万文字だからね。ちなみに、未公開部分がさらに1万文字ほどあって、それでも私の脳内構想の1/3くらい書けたかな、という感じ。

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レニャ

かなり大作になりそうだね。でも、こういうのって連載しているとだんだん長くなっていくよね。

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歩羽理

そうだね。だから、モチベーションが続く限りこのシリーズは続くんじゃないかな。ただ、最終話の構想はあるから、ある程度で踏ん切りをつけて終わらせるつもりだよ。

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レニャ

ちなみに、どんな終わらせ方なの?

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歩羽理

普通それ聞くかな。まあでも、ハッピーエンドに近いとは思うよ。実は、私がこれまでに創作したあるシリーズにそれとなく連結しちゃうような終わり方をする予定なんだ。なんにせよ、お気づきの通りこの作品は時間の経過がかなりあっさり描かれているから、数か月、時には数年単位で飛ぶことがあると思うよ。つまり、いつでも終わらせられるっちゃ終わらせられるんだよね。

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レニャ

なるほどね。じゃあ、末永く続く大人気シリーズになることを祈ってるよ。ばいちゃ!

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歩羽理

(やはり古い…)原文の初投稿が6/11となりますので、次回は6/11に特別合体号として、普段の3倍、1万文字以上を投稿します!お楽しみに!